モラルハラスメントとは
モラルハラスメントとは、家庭と言う閉じた人間関係、物理的にも精神的にも密室に近い中で、長期間無視をされたり、暴言や暴力を振るわれたり、理不尽なルールを押し付けられたり、逃げ場がなく追い詰められて心や体が病んでしまうような行為や態度のことです。モラルハラスメントをする人の性格としては、人を傷つけないといられないという要素を含んでいます。
モラルハラスメントの概念と定義
モラルハラスメントという言葉は、マリー・フランス・イルゴイエンヌさんの著書で、概念や定義が提唱され、日本では「モラルハラスメント 人を傷つけずにはいられない(高野優訳、1999年)」に一般に広まりました。
言葉や態度によって、巧妙に人の心を傷つける精神的な暴力=モラル・ハラスメント。家庭や職場で日常的に行なわれる、この「見えない暴力」は、相手の精神状態をしだいに不安定なものにし、ひどい場合は自殺に追いこむ。いったいどんな人間がこのような暴力をふるうのか?いかなる方法がよく使われるのか?どのような性格の人が標的にされやすいのか?どうしてその関係から抜け出せないのか?経験豊富な精神科医がその実態を徹底解明。人間関係に悩むことの多い現代人にとって必読の書とされています。
マリー・フランス・イルゴイエンヌは、モラルハラスメントのことを精神的暴力、精神的虐待という言葉を用いて表しています。
モラルハラスメント 夫婦・親子・職場、終わらない理由
モラルハラスメントの加害者たちは、人を傷つけないといられないような人達です。俺のハラスメントが身近でない人からすると、夫婦や親子、職場だとしてもモラルハラスメントを受けて苦痛があるならば、言い返したり、別れたり、離れたり、そのようにして距離を置くことをなぜしないのかと不思議に思うと思います。モラルハラスメントの被害者たちが、苦痛だと分かっていながらその苦痛から逃れようとしないのかと言うと、長年にわたり苦痛を受け続けていたために、反抗したり逃げる力もなくなり、正常な判断力もなくなってしまっているからです。精神的に普通の状態ならば、相手が常識的におかしいことや理不尽なルールを押し付けてきたとしても、「それはおかしい」というように、反論することができます。また常識に照らしてもどうしてもおかしくて、それでも相手がおかしなことを押し付けてくるのであれば、普通ならば逃げることができます。
ハラスメントを受け続けていると、正常な判断ができなくなり、「私が間違っているのかもしれない、私がおかしいのかもしれない」、そのように感じることによって、自分の正常な感覚を押し殺して、さらに自分が悪いと思い込むようになり、反抗をしたり、逃げる力は全く失われてしまうのです。
モラハラチェックリストは信用してはいけない
インターネット上を探すと、自分はモラハラなのか、相手はモラハラなのか、チェックリストで判定するような物がたくさん出回っています。モラハラチェックリストが全く間違っているわけではありませんが、モラハラチェックリストを行う時点で、自分が正しい感覚なのかが判断できなくなっているという状態である可能性が高いです。チェックリストというものは、自分にはない視点や着眼点を与えてくれ、モラハラの被害や、モラハラの事例などに気づくきっかけを与えてくれるものであることは確かです。しかし、チェックリストでたくさんチェック項目がついたからといって実際にモラハラの度合いが高いという決めつけには注意が必要です。またチェックリストの点数が低いからと言って、モラハラだと思っていることがモラハラではないと判断してしまうことも気をつけるべきです。
モラハラの基準は第三者的評価でなく人が傷ついたかどうか
モラハラを始め、セクハラやパワハラなど、一定のラインを引いてそのハラスメントが事実であったか、一般的に認められるものかを判断する傾向があります。しかしハラスメントというものは、チェックリストの点数がそのまま相手から受けたモラハラの被害度になるわけではありません。しかし、本当にモラハラを受け続けた人は、自分が悪いのかもしれないと思い込んでしまっており、もはやどこまでが相手からの被害で、自分がどれぐらい傷ついているか、耐えられない痛みであるのかなとも分からなくなってしまっています。第三者や専門家は、本人の傷の具合は本人にしか分かりませんが、傷ついているということを気づかせ、徐々にどの程度の傷があったのか、何が原因であったのか、それらを整理していくことがモラハラの負のサイクルから抜け出す第一歩となります。